3Dプリンタ

3Dプリントの差し込みピンが根元から折れる条件|折れる荷重の早見表と、0.50→2.25kgfにした3つの手

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3Dプリントした部品どうしを差し込みで繋ぐと、たいてい最初に折れるのはピンの根元です。

太さを少し足しても直りません。折れる荷重は、径と「突き出し長さ」と「根元の形」の3つで決まるからです。しかも立てて刷ったピンは、層間で割れるので想像よりずっと弱く出ます。

この記事は、ミニカー用ガレージの屋根を留めるピンが「幼児が押し込んだら折れる」と分かって作り直したときの記録です。計算で0.50kgfだったものを2.25kgfにしました。

結論:折れる横荷重の早見表

ピンの先端に横から力を掛けたとき、根元が折れる荷重です。単位はkgf。立てて刷った(=層に垂直に曲げが掛かる)場合の値です。

根元が直角のとき

ピン径 突き出し3mm 4mm 5mm 6mm
φ2.8 0.83 0.62 0.50 0.42
φ3.2 1.24 0.93 0.75 0.62
φ3.6 1.77 1.33 1.06 0.88
φ4.0 2.43 1.82 1.46 1.21

根元に広がり(R0.8相当)を付けたとき

ピン径 突き出し3mm 4mm 5mm 6mm
φ2.8 1.41 1.06 0.85 0.70
φ3.2 2.10 1.58 1.26 1.05
φ3.6 2.99 2.25 1.80 1.50
φ4.0 4.11 3.08 2.46 2.05

太字が今回の作り直しの前後です。φ2.8×5.0mm・根元直角の0.50kgf から、φ3.6×4.0mm・根元に広がりの2.25kgf へ。4.5倍になりました。

0.50kgfは、指1本で軽く押した程度の力です。子どもが屋根を少し傾けて押し込めば普通に超えます。

立てて刷ると弱い、をまず認める

この屋根はスライサに渡す前に裏返しています。サポートを出さないためです。その結果、ピンは立った状態で刷られます

横から曲げが掛かると、割れるのは層と層の境目です。フィラメントの押し出し方向に沿った強度ではなく、層間の強度で決まります。同じ形でも寝かせて刷れば数倍強くなりますが、印刷向きは他の都合(サポート・面の品質・反り)で決まってしまうことが多いので、まず「一番弱い向きで刷られる」前提で計算するほうが安全です。

この記事の数値はすべて、PLAの層間引張を25MPaという保守的な値に置いて計算しています。

計算式

丸いピンの根元が折れる横荷重Fは、

F = σ × Z / (L × Kt)

それぞれ、

  • σ … 層間の引張強さ。PLAで25MPa(保守値)
  • Z … 断面係数。丸棒なら Z = πd³/32
  • L … 突き出し長さ(モーメント腕)
  • Kt … 根元の応力集中係数。直角なら約2.2、広がりを付ければ約1.3

ここで効くのは径が3乗で効くことです。φ2.8→φ3.6は径で1.29倍ですが、Zは2.16→4.58mm³で2.1倍になります。

4.5倍の内訳は3つ。ただし1つは強度の話ではない

1. 太く、そして短く(約2.7倍)

径を上げるのは3乗で効くので最優先です。加えて突き出しを短くするとモーメント腕が縮み、そのぶん素直に効きます。今回は5.0→4.0mmにしました。

「差し込みは深いほうが安心」と考えて長くしがちですが、強度の観点では逆です。深さが要るのは抜け止めのためで、折れにくさとは別の話です。

2. 根元に広がりを付ける(約1.7倍)

根元が直角のままだと、そこが応力集中の始点になってきれいに割れます。R0.8相当の広がりを付けるだけで、係数が2.2→1.3になります。材料も時間もほとんど増えません。

問題は、広がりを付けると相手の穴に入らなくなることです。今回は受け穴側に座繰り(φ5.6)を掘って広がりを受けました。自分で両方作っているなら、これは同時に変えられます。

3. 先端テーパを長くする(強度は上がらない)

3つめは強度の話ではありません。そもそも変な力を掛けさせないための形です。

旧仕様は、穴の口でピンを捕まえられる幅が±0.60mmしかありませんでした。ここを外すとピン先が壁の天端に乗り上げ、その状態で押し込まれて根元に曲げが入ります。「折れる」前に「こじる」構造だったわけです。

先端テーパを0.3→1.5mmに伸ばし、φ2.0から1.5mm掛けてφ3.6まで開くようにしました。多少ずれていても芯を拾って滑り込みます。捕捉幅は±1.0mmになりました。

折れ荷重を4.5倍にしても、こじられれば意味がありません。手で組む部品では、この「入りやすさ」のほうが実際の破損率には効いている可能性があります。

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前提のほうを先に疑う

最初、ピンだけを太くしようとして詰まりました。側壁が6.0mmだと、φ3.2の穴を空けた時点で片側1.4mmしか残らないからです。穴を広げれば今度は受け側が割れます。

そこで側壁を6.0→8.0mmに変えました。8mmなら φ4.0の穴+座繰りφ5.6でも片側1.2mm残ります。

ピンの寸法だけを見ていると、ボトルネックが受け側にあることに気づけません。「太くできない」と感じたら、太さではなくその周りの厚みを疑うほうが早いです。

組んだ状態で干渉を測る

寸法を変えたら、入るかどうかを確かめます。ただし部品を単体で見ても分かりません。実際に組んだ位置関係で見る必要があります。

今回は、ピンの軸から0.02mm刻みで外向きに点を打ち、「ピン側の実体が終わる半径」と「受け側の実体が始まる半径」を各高さ・8方位で拾って、その差(片側すきま)を出しました。

  • 192サンプルで干渉0・片側すきま最小0.22mm(設計値どおり)
  • 最悪点は高さ50.07mm・方位5.9°で、ピン半径1.78 / 穴半径2.00

この「軸から外へ点を打って実体の境界を拾う」やり方は、メッシュの品質チェックでは絶対に出てこない不具合を捕まえます。非多様体もエッジも正常なのに組むと当たる、という状態は普通に起きます。

なお印刷向きは、裏返した状態で根元φ5.2→φ3.6→先端φ2.0と上へ細るだけなので、オーバーハングは出ずサポート不要のままです。太くしても印刷条件は変わっていません。

この寸法を他の部品に流用しないこと

今回の φ3.6/φ4.0 は、別に持っている φ2.8/φ3.2 の規格から意図的に外しています。この屋根とガレージは相手が固定で、他の部品と挿し替えないからです。

挿し替える前提の部品でこの寸法を使うと、規格が2つに割れて後で必ず事故ります。強度のために規格を外すなら、外した部品の範囲を先に決めておくほうがいいです。

まだ確かめていないこと

正直に書いておきます。

  • 実印刷での確認はまだです。0.50→2.25kgfは計算値で、PLAの層間25MPaという仮定に依存しています。実際の層間強度は温度・冷却・積層ピッチで動くので、刷ったら横から押して確かめる必要があります
  • 早見表も同じ仮定で作った計算値です。絶対値より、条件を変えたときの倍率のほうが信用できます(「φを1段太くすれば約1.4倍」「根元に広がりを付ければ約1.7倍」といった読み方)
  • PETGなど他の素材では層間強度が変わるので、表の数値はそのまま使えません

実際に刷って測ったら、この記事は数値を差し替えて更新します。

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