3Dプリンタの勘合クリアランス実測表|実測どおりに作ると入らない理由と、確定した数値
3Dプリンタで「既製品にはまる部品」を作るとき、最初にぶつかるのがクリアランスです。
実物をノギスで測って、その寸法どおりに作る。入りません。
この記事は、トミカタウンの道路パーツに接続する互換部品を作る過程で、実際に印刷しては削りを繰り返して確定させた数値の記録です。理論値ではなく、現物が合格するまで動かした実測値です。
結論:先に答え
Bambu Lab A1・ノズル0.4mm・PLAで、既製品の凸部(オス)に挿さる部品を作る場合の確定値です。
| 項目 | 実物の実測値 | その値で作った結果 | 確定値 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| オス(凸)の短辺 | 10.0mm | 入らない | 9.2mm | −0.8mm |
| メス(凹)の口 | — | 10.8mmでは緩い | 9.8mm | −1.0mm |
| 片側クリアランス | — | 0.3mmでは不足 | 0.4mm | +0.1mm |
ポイントはオス側を0.8mm細くしたことです。メス側を広げる方向でも理屈は合いますが、既製品側のメスは削れません。自作側で吸収するしかありません。
なぜ実測どおりでは入らないのか
実物を測って10.0mm。それを10.0mmで作る。入らない。理由は3つあります。
1. エレファントフット
1層目はベッドに押しつけられて潰れ、設計より外側へ膨らみます。挿し込む部品の根元がわずかに太くなり、これだけで入らなくなります。
2. 収縮
溶けた樹脂が冷えて縮みます。ただし縮む方向は一様ではなく、部品の形状と印刷向きで変わります。「縮むから大きめに作る」という単純な補正は、挿し込み部品では逆効果になります。
3. 押し出し幅の丸め
スライサーは壁をノズル幅の整数倍に丸めます。0.4mmノズルなら0.4mm刻み。設計で0.1mm刻みに調整しても、その差はスライス時点で消えることがあります。
この3つが重なるため、実測値をそのまま設計値にすると、必ず「きつい側」に外れます。
クリアランスの決め方
片側0.4mmという値は、いきなり出したものではありません。0.3mmで作って不足し、0.4mmにして合格しました。
0.1mm刻みで調整する場合の目安です。
- きつくて入らない → オス側を0.1mm細くする(メス側を広げるより確実。既製品と接続する場合はメスを触れない)
- 入るが固い → あと0.1mm。ただし遊ぶ部品なら「少し固い」で止めるほうがよい。抜けるより良い
- ゆるくて抜ける → 0.1mm戻す。緩い側の修正のほうが失敗が目立つ
失敗の記録:スナップフィットが折れた
クリアランスが合っていても壊れます。実際に折れました。
φ4mmのスナップフィットペグ(軸2.0R・返し2.45R)で部品を固定する設計にしたところ、PLAで印刷したものが、遊んでいる最中に折れました。
原因を数値で追うとこうでした。
| 項目 | 折れた版 | 修正後 |
|---|---|---|
| 有効撓みスパン | 3.2mm | 8.3mm |
| 計算ひずみ | 9.4% | 2.18% |
| PLA許容 | 2〜3% | |
| 材料 | PLA | |
ひずみ9.4%は許容の3倍以上です。折れて当然でした。
原因は軸から本体への断面が直角の段差で拡大していたことです。設計上のスパンは5.2mmのつもりでしたが、直角段差の位置で実質的に拘束されてしまい、実際に曲がれる長さは3.2mmしかありませんでした。
修正は、軸径を一定にしたスリーブと環状の空洞を設けて、曲がる長さを8.3mmまで伸ばすこと。あわせて根元にR0.45、返し肩にR0.2のフィレットを追加しました。直角のノッチは、そこに応力が集中して折れます。
なお修正後のひずみ2.18%は、PLAでは許容下限の2%を上回っており境界線上です。PETGなら余裕があります。爪のある嵌合部を作るなら、材料はPETGを勧めます。
まだ検証していない数値
正直に書いておきます。以下は類推値で、実印刷で確認していません。
- 丸ポールの勘合:軸φ3.7mm / 受穴φ4.0mm(片側0.15mm)
この値を確定させるため、穴径φ3.90 / φ4.00 / φ4.10 の3種を並べたテストクーポンを用意しました。印刷して差し込み、結果が出たらこの記事に追記します。
クーポンを先に刷るのは、本番部品を刷ってから合わないと分かると、時間もフィラメントも大きく無駄になるからです。40×40×5mmのクーポンなら数分で済みます。
検証環境
- プリンタ:Bambu Lab A1
- ノズル径:0.4mm
- 材料:PLA(嵌合部の強度検証はPETGでも実施)
プリンタと材料が変われば数値も変わります。ただし「実測値のままでは入らない」という傾向は共通です。手元の環境で0.1mm刻みのクーポンを作って確かめるのが、結局いちばん早い方法です。
本記事で扱う互換部品は個人が製作した非公式のものであり、公式製品・許諾製品ではありません。記事中の製品名・会社名は各社の商標または登録商標です。